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コロナど真ん中、会社どうしようかを考える。
観光業や飲食業をはじめ、日本経済全体が未曾有の危機に瀕しています。もちろん観光に携わる当社も大打撃を受けており、間違いなく大ピンチど真ん中です。
ただ、そのいっぽうで、これまで忙しく飛び回っていた日常が突然ピタッと静かになり、考える時間がタップリできました。(飲み会が無くなったので)アルコールが抜けきり、冴え渡った脳ミソで、日本と台湾に根ざす企業として担うべき新たな事業を温めています。自粛生活が長引き、世の中は暗澹たる空気が立ち込めておりますが、このトンネルもいつかは抜けます。トンネルを抜けた時に最高のスタートが切れるよう、いまは雌伏する時です。
変化が前倒しになった
「コロナ収束後も、もう2度と元の日常には戻らない」と言う人も、少なくありません。私も、正直に言ってそう思います。と言ってもそれは決して将来を悲観するものではなく、コロナショックがあろうとなかろうと、いつかは訪れるべき変化が、10〜20年前倒しになったということです。
例えば役所がハンコを廃止したり、大学がオンライン授業を導入したり、あるいはずっとその必要が叫ばれていた9月入学が実現するかもしれない。これらはコロナによって前倒しになった変化です。また多くのビジネスパーソンが、毎日満員電車に乗って通勤することの無意味さに気づいたはずです。リモート会議がこれだけ定着すれば、コロナが収束したとして、わざわざ顔を合わせて会議する回数は元どおりにはならないし、毎朝定時出社する事に果たしてどれだけ意味があるのかという事を、皆んな気づかされました。
“アフターコロナ”或いは”ウィズコロナ”がどんな社会になるか、様々な意見が百家争鳴ですが、私は個人的には、この国の将来をけっこう楽観的に思い描いています。政治制度、社会保障制度、教育制度等等、わが国の基礎的社会システムは、150年前の明治維新の時にできたもので、あらゆる側面で制度疲労をきたしています。それらの時代に則していないシステムのせいで、政治は空回りするばかり、企業は生産性が上がらず国際競争で負けるし、若者は将来に不安を感じ、出生率が上がらない。今回のコロナショックは、これらのupdateを一気に進める好機だと考えています。
次の時代に求められるスキル
資本主義社会において、企業は、おのおのの市場で競い合い、シェアを奪い合う事を繰り返してきました。熾烈な競争のなかでイノベーションが生まれ、それが我々の生活をより豊かなものにし、経済全体を成長させてきたわけです。そんな資本主義社会の中では、ロジカルに思考し、スピーディで効率が良く、組織に順応し、ルールを遵守できる人が「有能」とされます。高学歴で、MBAを修了したようなエリートが、重宝される世界です。しかし、著作『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」~ (光文社新書)』で有名な山口周氏は、上述のような「有能」なビジネスパーソンは、もはや「オールドタイプ」と喝破します。
画像出典:ダイヤモンドオンライン
また、もう3年も前ですが、孫正義氏の実弟でガンホー創業者の孫泰蔵氏がFacebookに投稿した文章を、私は今でも何度も反芻して読んでいます。長いですが、本当に含蓄に富む内容ですので、引用させてください。
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経済誌の「賢人の警鐘」という連載に、有名な食品企業の会長のお話があった。成功した経営者としてたいへん経験豊富な方の警鐘というので、そりゃしっかり読まんといかんな、と読み進めた。下記がその要約。
– 日本企業は最高益を更新中、しかし本当の実力か?
– 伸びてても成長率は鈍化している
– なので「もう一度基本に戻ろう」
– 基本方針「10の考え方」を発表した
– ①「人の評価はフェアに」
– ②「現状維持即脱落」
– ③「正しいことを正しく」など
– ④「コミットメント & アカウンタビリティー
(約束と説明責任)」が最も重要
– 当社は数字に徹底的にこだわる
– ほとんどの仕事は数値にして示す
– トップから現場まで全スタッフ目標達成にコミット
– その成果で報酬が決まるフェアな成果主義を採用
– 無駄な仕事をやめ、必要なものに集中すれば
目標は必ず達成できる
– この基本が揺らいでいたら先は危うい
– 好業績の今こそ企業人は考えるべき
「勝って兜の緒を締めよ」という、賢人による警鐘。これを読んで、なるほど、うんそのとおり、と思わない経営者やエグゼクティブはいないはず。そういうトレーニングを受けた人ほど頷くはずだ。
♢
この際、ハッキリ言おう。
「この考え方こそが日本をダメにした」
と。長年考え続けてきた末の結論なので、もうハッキリとそう断言する。
この「MBA(Master of Business Administration)の劣化コピー」みたいな考え方こそが、人々を拝金主義にし、人々を自己肯定感のない、常に不安な心理状態に陥れ、家族や地域のコミュニティを破壊し、日本をダメにしたのだと。そもそも上記の言論は、疑問や矛盾だらけだ。例えば、
– 「数字にこだわる。」←限定的なパラメータやKPIで、複雑で変化の激しい市場に合う経営ができると思っているのか?
– 「人の評価はフェアに」←様々な活動をする多種多様な人員を、いったいどうやってフェアに評価できると言うのか?
– それを「フェアにやってる」と言うのなら、その言動は欺瞞に満ちた嘘や詭弁であり、全然「正しいことを正しく」やっていないのではないか?
売上や粗利、営業利益、ROI、EBITDAなどの「ショボいパラメータ」至上主義の、理数的にも社会的にもなんの正当な根拠もない「ドグマ」には、もうこれからの人たちはついていかないと思う。少なくとも、僕は絶対についていかない。なによりも、このやり方にはまったくクリエイティブなセンスがなく、ダサいのが気にくわない。僕がいわゆる「経営者」になりたくない最大の理由はそこにある。
かつて僕もこのドグマのたいへんな信奉者だった。東京大学経済学部経営学科を卒業し、いつか米国のMBAを修学しに行くんだと憧れた。多くのところでこの考え方を金科玉条のように掲げ、意見が違う人を「お前はもっと勉強しろ!」と切り捨て、「データドリブンな科学的経営」、「実力主義 & 成果主義な評価報酬制度」などを大いに推進してきた。この考え方を心から信仰し、実践励行してきた真面目な信者だった。
僕がいま最も「unlearn(=学んだことを一旦捨て去ること。脱学習。)」に勤めてるのは、まさにこのドグマについてである。数十年染み込んだものなので、脱学習のコツを掴むのは簡単ではないが、しかしこの際トコトンやってみようと思っている。過去の成功体験との完全なる訣別。
業火の中に身を置き、灰燼の中から自ら再生させてみせる。そのために、新たな探求の旅を始める
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孫泰蔵氏が批判する「ショボいパラメータ至上主義」と、山口氏の言う「オールドタイプ」は、ほぼ同じ意味と捉えて良いのかなと思っています。同時にそういう従来型、つまりいま現在の社会でマジョリティ(主流)の考え方は、法則や体系を重んじ、固定的属性によって捉え、問題を分類して個別に解決するという意味で、とても「西洋的」だと、それは結構オワコン化してきていると、私は考えています。
次の時代にフィットする東洋思考
では「東洋的」な考えとはどんなものでしょうか?シンプルに言うと「全ての要素はつながっていて個別化できないので、大きな流れの中で問題を解決する」というものです。コロナショックがあろうとなかろうと、現代を生きる我々は決められたルールの中で働く必要はないし、企業も競争ではなく共創を志向したほうが生き残れる、そういう時代になりつつあります。ゆえにこれからは人も組織も国家も、東洋的思考の導入がより大切になります(これは西洋的思考を全否定するのではなく、思考のバランスの再設定が必要だという事です)。
東洋思想と言えば四書五経や諸子百家など、さまざまな思想哲学がありますが、中でも新しい時代の思考にフィットするのは「老子」と「荘子」、いわゆる「老荘思想」です。
老荘思想はざっくり言うと「自然のままが最も良い状態。無理すんな。」というものです。古来より「上り坂の儒家、下り坂の老荘」という言葉がある通り、出世や成功を目指して高みを目指すのであれば儒教の教えが、もはや満たされて自由に生きたいなら老荘の教えが参考になります(儒教の考えを否定するものでは全く無く、それぞれの場面で使い分ける事が肝要です)。
最高にSDGsな老荘思想
最近、スーツにSDGsのバッジをつけた人をよく見かけます(オジサン率99% ※吉田調べ)が、実は老子・荘子こそ、SDGsのさきがけと言って過言ではありません。
天の流れに逆らわず、運命を受け入れ、自分にも他人にも無理を強いず、自然のままに生きる。めちゃくちゃSustainable(持続可能)な考え方です。
例えば老子・荘子の言葉にはどんなものがあるのでしょうか?特に我々にとってヒントとなるであろう箇所を、いくつか挙げます。
上善如水
多くの企業が謳う、所謂「中期経営計画」といった類のものは、911同時多発テロ(2001)、リーマンショック(2008)、東日本大震災(2011)、コロナショック(2020)と、不測の事態があるたびに簡単に吹っ飛びます。また、今後テクノロジーの進化に伴う社会変化は、どんどん加速します。これだけ変化の激しい世の中で、ミッション・KPI・ROI・EBITDA…etc、そういった目標や指標にどれだけ意味があるでしょうか。自分で立てた目標にとらわれて、結果的に変化に順応できなくなってしまう。であるならば、世の中の変化に合わせて自らも変化するのが良い。水のように決まった形を持たず上から下へ流れ、暑ければ蒸発し、寒ければ凝固し、それでいて岩をも穿つ強さを持つ。
万物斉同(ばんぶつせいどう)
「善い or 悪い」「美しい or 醜い」「貴い or 卑しい」などの概念は、元来自然界には存在しない。それらは人間が勝手な基準で分け隔てたもの。世のあらゆるものは本来同じであり、つながっている、という考え方。小さな視点から、人間が勝手に決め付けた概念に右往左往するから苦しむのであって、もっと大きな視点から考えれば、あらゆる対立や差別は消滅し、全ては同一であるという結論に至る、と説きます。それぞれがお互いの個性を認め合い、多様性豊かな社会を実現する上で、とても大事にしたい考えです。
小国寡民(しょうこくかみん)
理想的な国家とは、国土が小さくて人口が少ない国である。
中国やインドなど人口10億人以上の国は言うに及ばず、アメリカや日本なども含めた大国の国民が必ずしも幸せとは限りません。欧州やアジアの小国には、大国のような軍事力はなくとも、国民の貧富格差が小さく、社会保障も充実している国が数多くあります。
企業に置き換えても同様で、大企業は確かに経営が安定し社会的に知名度はありますが、そこで働く社員が幸福かどうかはまた話は別。多くのレガシーを抱えている為にそれが重荷となり、対応の遅れがこの激動の時代にかなり不利に働きます。また、これまで急成長を志向してきたスタートアップも、今回のコロナショックで社員や設備をだぶつかせ、出口を失っている会社が多数あります。
生物の進化の過程でも、強く大きな恐竜は地球環境の変化に対応できず絶滅し、弱く小さくても寒冷な気温に対応した哺乳類が繁栄しました。
また、資金調達して拡大を志向する場合は、どんどんバランスシートが大きくなりますが、一般的にはバランスシートはスリム化した方が良い。資産をどれだけ効率よく回して利益を出せているかを測る指標としてROA(Return on Asset)がありますが、帳簿内のぜい肉を落とせば効率よく利益を出せる体質になります。→【参考】バランスシートを縮小する意味は?スリム化によって財務体質を改善
生物も国家も企業も、大きい事が必ずしも善ではありません。特に変化の大きい時代には、大きい事のデメリットが強く働きます。
未来はめちゃくちゃ明るい
松下幸之助翁曰く「好況良し、不況さらに良し」、今回の未曾有の危機は、実はまたとないチャンスです。今までガッチガチに固められた旧態依然とした社会システムが、これを機に一気に変わるかも知れません。当社には大企業のような信用力や体力はありませんが、一方で重荷になるようなレガシー的なアセットはありません。組織は必要な人員だけで成り立っており、必要ない人員が一人もいません。また、メンテナンスコストが高価なシステムも無いし、在庫を抱えるビジネスモデルでもありません(日本酒以外w)。オフィス家賃も渋谷区とは思えないくらい安く抑えてきましたし、日ごろ各金融機関とは良好な関係構築に努めつつ、大規模な資金調達もしていません。組織としてとても身軽で、尚且つ外部株主も入っていないので、迅速に意思決定できます。
今は自粛期間真っ只中で移動も制限され、感染状況がいつどう変動するか、全く見通しが立ちません。感染拡大の続くアメリカや欧州はもちろんのこと、日本や台湾に関しても不確定要素が多すぎて、いまなお次の一手を打つべき判断の材料に乏しく、まだ決断のタイミングではない。今はできる準備を粛々と進める時。まず人件費以外でカットできるものをかたっぱしからカットしました。そして社内でリモートワークの仕組みを構築し、それに伴い組織図にも変更を入れています。自分としては、普段できない勉強をしたり、YouTubeのチャンネル登録を増やしたり(先日1万人突破しました!喜!)、新規事業の構想を練ったりしてます。近い将来世の中がこの暗雲を抜け、ある程度将来の道筋が見えたら、一気にロケットスタート切れれば最高だと思っています。
競わず争わず、共存共栄を志向する。
ユーザとクライアント、そして当社と関わるすべての皆様の幸福に貢献する。
そのためにはまず、社員も自分も健康で幸福である。
いままで以上に励んでまいります!