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台湾経済好調の主役!半導体産業
2020年は本当にひどい年でした。東京五輪の年に日本が、そして全世界がまさかリーマンショックを遥かに上回る大惨事に見舞われる事になるとは、全く想像だにしておりませんでした。2020年、当然ながら主要国はGDPマイナス成長を見込んでいますが、そんな中、何と台湾は驚くべき事に、プラス成長でフィニッシュ。要因としては、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えたほか、輸出主導の台湾は、世界的なテレワークの拡大で米アマゾンなど海外向けのサーバーやパソコン需要などが膨らみました。そんな好調・台湾経済の牽引役と言えるのは、はやり半導体です。
今日は、半導体産業がどれだけ台湾経済においてプレゼンスが大きいか、そして半導体がなぜ世界で注目を集め、主要国が競争を繰り広げているか、その現状を「文系視点」で、ゆる〜く、まとめてみたいと思います。
そもそも半導体とは?
半導体(はんどうたい、英: semiconductor)とは、電気伝導性の良い金属などの導体(良導体)と電気抵抗率の大きい絶縁体(不導体)の中間的な抵抗率をもつ物質を言う。(Wikipediaより)
半導体は、PCやスマホ、テレビやエアコンなど家電、銀行ATMや電車や飛行機の運行など、生活のあらゆる商品・サービスに幅広く活用されています。また、クルマの自動運転やドローンなどの新技術、そして当然軍事技術にも活用されており、まさに現代の様々な産業に欠かせないもの。特に昨今はコロナ禍で、デジタル製品を中心としたオンライン需要が爆発し、半導体市場は活況を呈しています。
半導体の製造工程については、この↓解説動画がシンプルでわかりやすかったので、貼ります。
世界で圧倒的シェアを誇るファウンドリ、TSMC
半導体といえば「インテル入ってる(←このコピーマジで天才的に秀逸だと思います)」のintelが有名ですが、インテルのような伝統的半導体メーカーは、自前の生産工場(通称ファブ。Fabrication=ものづくり、から)を保有し、設計から生産までを自社で行っています。intelと並ぶ半導体大手メーカー・AMDの創業者ジェリー・サンダースは過去に「ファブを持ってこそ真の男」と言ったそうです。
しかし、Appleが自前の工場を持たず、iPhoneの製造を台湾ホンハイ(鴻海精密工業)に委託しているように、時代はファブレス。つまり自前で工場を持たず、製造をアウトソースするメーカーが増えてきました。半導体業界でも、AMDはファブレスに移行し、米NVIDIA(エヌビディア)や米Qualcomm(クアルコム)などの大手も、自前で工場を持っていません。
それらの巨大ファブレスメーカーの半導体製造を、一手に担っているのが「ファウンドリ」と呼ばれる事業者であり、その圧倒的最大手が、台湾TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, 台灣積體電路製造=通称「台積電Táijīdiàn」)です。
画像引用元:Wikipedia
一般的に半導体は、回路線幅が細く、回路が小さいほど、多くのトランジスタを集積する事ができ、消費電力が小さくなり、処理速度が速くなります。この集積回路の微細化は、半世紀以上にわたり目覚ましい勢い(所謂ムーアの法則)で進行し、集積回路はどんどん小さく、高速かつ省電力になっています。で、中でもTSMCは、世界でも圧倒的に高性能、つまり回路線幅が小さく高速・低電力な半導体生産能力を擁しています。他メーカーが、10ナノメートルをどうやって下回るかに腐心する中、業界で「ひとつ次の世代を歩んでいる」と言われるTSMCは、すでに5ナノメートルを製造し、そして次世代として3ナノメートル線幅(髪の毛の3万分の1)の半導体を開発しています。
画像出典元:IC Insight
日本ではあまり知られていませんが、TSMCの時価総額は、なんとトヨタ自動車の2倍以上。給料も爆上がりで、TSMCのエンジニアの中には賞与が「41ヶ月分」も、と言うニュースも台湾で報道されました(その分、社員のストレスも半端じゃない、というニュースも良くみます)。
画像引用元:東森新聞
↑TSMCの尾牙(会社主催の忘年会)。日本の忘年会では考えられない様な煌びやかな演出に、豪華商品。こんな宴会が、各セクション毎に爆催される。
↑日本を始め世界中の航空各社は、コロナ禍で苦戦を強いられていますが、驚くべき事に、2020年2Q決算、台湾・中華航空とエバー航空の大手2社は黒字。その背景には、半導体の輸出が絶好調である事があります。旅客機もカーゴに転換し、電子部品を世界中に輸送しています。(画像引用元:Instagram)←CAさん、こんな写真インスタ挙げてええんか…..???w
なぜ半導体が米中衝突の争点となるのか?
「九段線で囲い込まれた宝を救い上げなければならない」――。ワシントンの元米外交官はこう熱弁をふるった。(日経新聞2020年12月23日)
九段線(Nine-dash Line)とは、別名U字線、牛舌線とも言う、中国が勝手に策定している海上権益ラインです。
画像引用元:THE PAGE
そして、ここで言う「救い上げなければいけない宝」とは、他ならぬTSMCのこと。クアルコムやエヌビディアなど米国の半導体企業は、その製造の大半をTSMCに依存していますし、iPhoneもMacbookも、TSMCからの供給が無ければ作れません。TSMCの生産拠点がある台湾・新竹が中国の影響下に陥れば、アメリカやその同盟国のあらゆるサプライチェーンに影響を及ぼしかねません。
米国・トランプ政権はかねてより、中国・ファーウェイ(華為)をエンティティーリスト(米国にとって、取引するのが好ましくない企業のリスト)に入れ、同社に対し猛烈な制裁を行って排除してきましたが、2020年5月、ファーウェイが設計した半導体を、海外のファウンドリが生産するのを禁止するという、新たな制裁を導入しました。ファーウェイもAppleなどのファブレスメーカー同様、半導体の設計までは自前でできても、それを量産する能力はありません。最新スマートフォンに用いる高性能半導体の生産を、TSMCに依存していたので、アメリカはそこを突いた訳です。米中のあいだで板挟みになったTSMCは、結果として米国の要求を受け入れ、ファーウェイへの供給を停止しました。そしてまた、米・アリゾナ州に大規模な半導体生産拠点を建造する事を表明しています。
また、最近ではTSMCは日本にも大規模な開発拠点を設置するというニュースも報道されました。
半導体で“日台連合”実現か?受託生産最大手のTSMC、つくばに開発センター新設へ
北九州市にも工場建設を検討
生産ではなく開発の拠点をつくるというのが注目ですね。
中国「赤い半導体」の実力
「産業の米」。戦後日本の経済用語で「日本の産業の中枢を担う物」を指す語です(現代日本人はお米をあまり食べなくなりましたが)。 冷戦時代までは、日本の高度経済成長を支えた鉄鋼が、産業の米でした。 そして冷戦終結後は、半導体が新たに、産業の米と呼ばれます。5GやIoTの時代を迎え、半導体の存在感は更に大きくなりました。
アメリカから、半導体という「産業の米」の供給を断たれつつある中国にとって、最大の切り札は、上海に拠点を置くファウンドリ・SMIC(中芯国際集成電路製造有限公司)です。このSMICは、TSMCとの関係が深く、TSMC創業者の台湾人起業家・張忠謀(モリス・チャン)の部下だった張汝京が、2000年に自分の会社をTSMCに売却し、その資金を以て中国大陸で創立した会社です。張汝京は、南京生まれ、台湾大学卒のエンジニア。現在同社の経営からは退いていますが「中国半導体の父」と言われる存在です。
画像出典:新浪財經
日本では、自国で蓄積した技術を元に中国や韓国で事業展開すると、各方面から批判を浴びる事になりがちですが、台湾では、成功した資本を元に大陸でビジネスする事は、昔からよくある話。中国と深い伝統的・歴史的関係を持ち、共通の言語でコミュニケーションできる台湾企業は、易々と中台の境界を越えていきます。この中国と台湾の、遠くて近い(or近くて遠い?)距離感は、我々日本人がなかなか理解の及ばざる所があります。
さて、SMICはファーウェイ同様、アメリカの禁輸リストに掲載された企業ではありますが、同社を巡っては2020年末、大きな動きがありました。
SMICが2020年12月31日に発表した新体制によると、半導体技術に関わる最高幹部は全部で4人。経営トップの中国人の周子学・董事長を除き、他3人は全て「台湾人材」で固めました。
TSMCが3ナノメートル線幅の開発に着手する一方、SMICは依然、14ナノメートルまでのプロセス技術で、集積回路製造サービスを提供していますので、SMICの技術力はまだまだTSMCのはるか後ろ、10年以上遅れていると言われています。トップ層が変わったところで、一朝一夕にその形勢が逆転することはなさそうですが、中国は国家を挙げて半導体産業を育成しています。昨年、上海科創板(中国版ナスダック)に上場したSMICは、2020年世界最高額を調達しました。
今後SMICは政府と密接に連携し、巨額の投資を武器に、圧倒的トップ企業であるTSMCを猛追すると思われます。
初めてコメントします!
いつもラジオで吉田さんのトークを拝聴していますが、トークでは語りきれない台湾の経済情報がこんなに分かりやすく書かれていて、とても勉強になりました!それにしても台湾のGDPが2020年もプラスだったとは驚きです。これからも台湾はますます発展しそうですね!