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何事も、待つうちが花。
うなぎ屋というのは、客の注文を受けて焼き始めるから、待つのは覚悟をしなければならない。店によっては1時間近く待たなければならないから、間違っても急いでいる時には行ってはいけない。
待つ間、うざくやうまきをつまみながら、お酒をちびちびと呑む。この瞬間が酒飲みには最高に贅沢でたまらない。待たされる以上、ゆっくり飲む大義があるのであって、店の前にどれだけ客が並んでいようが泰然自若、堂々と酒を呑んでいられる。ちなみに江戸時代には、うなぎ屋は江戸っ子たちの格好のデートの場所だったらしい。うなぎが焼きあがるまで待たされるので、長い時間会話が出来るというわけだ。
うなぎ屋に限らず、何でも待つうちが一番楽しい。
子供の頃、遠足が楽しみでたまらず、前の晩なかなか寝られなかったという経験は、誰にでもあるだろう。しかしいざ翌日遠足に行ってみると、そんなに腹を抱えて笑ったり、狂喜するほど楽しかったりという事もなく、意外とあっという間に終わってしまうものである。
クリスマスも同様で、年末の都会の慌ただしくもきらびやかな雰囲気は、本当に何度経験しても心躍るものである。街中イルミネーションがともり、クリスマスソングが流れ、クリスマスイブの最高潮に向けて、心なしか自分のテンションもどんどん上がっていく。しかしいざイブの夜を迎えてみると、結局いつものメンツでいつもの場所で呑んでいたりする。そして26日になれば街中のツリーもあっけなく撤去され、あっという間に正月の門松にすり替わっているのだから、「あのウキウキ感は幻だったのか」と毎年思ってしまう。
であるから、何事も待つうちが最も良いのである。
今日も、待ちに待ったうなぎがついに運ばれてきたが、ひと口ふた口と「美味い!」と唸ったあとはもう、食欲に任せてむさぼるのみで、後に残ったのは食べ過ぎた腹の苦しみと、また運動して節制せねばという罪悪感だった。